硬直1000F

3日でやめます

セブンスヘブン

 今年の春に引っ越しをした。設備面で不満はないが、駅から若干離れているのであまり近隣には店が多くない。しかし、さすがに今の時代、近くにコンビニが1軒もない・・・ということはなくて安心した。一人暮らしにとって、「最寄りのコンビニが何か」は、死活問題とまではいかなくとも、重要な要素であることには間違いない。そして私の新居の最寄りは、セブンイレブンだった。

 

 

 私は生粋のセブンユーザーである。思えば、愛知県に初めてセブンイレブンができたのは私が中学生くらいのときだった気がする。全国シェアNo.1のコンビニが出店してくることに、なんとなく周囲もざわついていた。あまのじゃくな私はしゃらくせえ、俺はサークルKしか使わねえ!!と反抗心を持った記憶がある。しかし今や愛知県は完全にその傘下に置かれ、私自身も完全にセブンの魔力に取り憑かれてしまった。タイムマシンがあったら過去に戻って中学生の自分に「お前の信奉するそのコンビニ消えるからおとなしくセブンを崇めよ」と言ってやりたい。(念のために言っておくが、サークルKが嫌いなわけではない。焼き鳥おいしい)

 

 今となってはほぼ毎日セブンを利用している。他のコンビニに比べ、だいたい何を食べてもうまい、というのが大きい。私はグルメではないし、コンビニの商品なんてある程度の水準を満たしていればいいと思ってはいる。しかしセブンの商品は、「まあこんな感じの味だろ」というラインをおよそ凌駕してくる。「次にこの音が来てほしいな」という期待をさせ、その期待通りの音を鳴らすのがポップミュージックであるならば、セブンイレブンはその期待を裏切って爆音を鳴らす、コンビニ界のロックンローラーだ。なんかずっと店内で清志郎の曲流れてるし。自覚しているに違いない。

 

 

 ところで、セブンイレブンの商品はいつからか、ただの料理名でなく、高級レストランよろしく説明文を冠するようになった。「とろ~りチーズのデミオムライス」とか、「ごろごろ春野菜のチョップドサラダ」とか、「デブはこれでも食っとけ!とんこつラーメン」とか。無機質に「オムライス」と書かれただけの商品より、あざとくても「とろ~りチーズの」をつけられた商品のほうを人は選んでしまう。この「説明文+料理名」の形式で統一するという方法、見る度に「小癪だな」とは思うものの、やはりおいしそうに見えてしまうから、やはり戦略としては成功なのだろう。

 

 この説明文の部分には、購買意欲をそそるためのメカニズムが、2つ隠されていると私は考えている。

 

 ひとつは、「情報開示」である。「とろ~りチーズ」や「ごろごろ春野菜」のように、内容物をフィーチャーして取り出してくることで、「あなたはこの商品によってこんな食体験ができますよ」という情報を先に与えているのだ。先に凌駕しているとは書いたが、「まあこんな感じの味だろ」を満たすことがコンビニフードの本分なのだから、先に情報を書き加えておくことで、客はその予想がしやすい=味の予想がつくから安心して購入できるという効果がある。

 

 2つ目は、「唯一性」である。コンビニの商品は、ある意味「量産型」の最たるものであり、全国どこで買っても同じ値段・同じ味なのがウリだ。しかし、とはいえ他店との差別化を図らなければならないのも事実。この説明文を付すことで、「オムライスが食べたいけどべつにどこで買ってもいいか」という層を、「とろ~りチーズがのっているからセブンにしよう!」という顧客に変えてしまうわけである。

 

 見事な戦略である。私が別の会社の経営者だったら速攻でパクると思う。

 

 

 さて、そんな戦略が施されたセブンイレブンの商品の中でも、シンプルかつハイクオリティなロングセラーがこちら。

 

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 「特製牛丼〇」である。うまい。自分でトッピングとかしてもうまい。普通にす〇家とかよりうまい。オススメです。

 

 

 しかし。ここでもう一度、先ほどのセブンイレブンの戦略を思い返してみたい。今やセブンの商品はすべて、「説明文+料理名」になっているはずだ。となればこの牛丼も例に漏れないはず。つまり、「特製+牛丼〇」という構造になっていると思われる。

 

 ここでひとつ疑問が生ずる。「特製牛丼〇」の説明文に該当する部分は「特製」である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・は?

 

 

 

 は?としか言えない。「特製」は、先に挙げた「情報開示」と「唯一性」の構造にまったく当てはまらない。「特製」だということがわかったところで「なるほど!特製味ね!」とはならないし、「他のコンビニと違ってセブンの特製牛丼〇は特製だから買うか!」とはならない。なんならこいつに「特製」がついていることによってまるで他の商品は全部「特製じゃない」みたいなレッテルを貼られてすらいる気がする。こいつ邪魔じゃね?

 

 この説明文は、大きなハンデだ。とろ~りチーズによって敵を絡め取る能力者や、春野菜の銃弾をごろごろと無限に生成して敵を攻撃する能力者たちに囲まれて、「特製牛丼〇」は親からの愛を一身に受けて育ったという”特製性”しか取り柄がない。大丈夫なのか心配になる。読んでないけどヒロアカの主人公がそんな感じらしい。

 

 しかし、おそらくこれは杞憂なのだろう。売り上げのことは知らないが、勃興激しいコンビニフードの中で、これだけのロングセラーになっているのは、やはりすごいことであるように思う。大した武器も能力も持たず、愛と友情で問題を解決してゆくセブンイレブンの中心的存在。このへんもまさにヒロアカの主人公とかぶるところがある。読んでないけど。

 

 

 

 セブンイレブンの主人公、「特製牛丼〇」。彼が愛と友情を忘れない限り、私は買い続ける。雨が降っても。雪が降っても。家からもっと近いコンビニができたら、まあ、その、ちょっと話は変わってくるけども。

 

 

 

 

 で結局、

 

 

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「〇」は何なんだ。