硬直1000F

3日でやめます

FAXっていう名称はさすがにギリギリを攻めすぎてると思う

 

 時代は進んでいく。気づかないうちに、しかし留まることなく進んでいく。入れ替わりの激しい家電業界では、祇園精舎の鐘の声といわず、アラーム音ひとつにも諸行無常の響きが込められている気さえする。

 

 

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 私の職場では、現在でもFAXが現役バリバリで動いている。この令和の時代にだ。

 

 このFAXという機器に、もう私は心底ウンザリしている。生まれるべきではなかった存在。家電界の忌み子。はっきり言うと今回の記事は、FAXレイシストである私によるFAXへのヘイトスピーチである。FAXに愛着がある人や、FAXを売って生計を立てている人、ご両親が小さな町工場で丹精込めてFAX作りをしているのを小さなころから見て育った人なんかは、早めにブラウザバックしてツイッターにFAX応援コメントでも書きに行ってもらって構わない。早く去りたまえ。では邪魔者は消えたようなので始めたいと思う。

 

 

 

 

 

 コミュニケーションツールは、目まぐるしい速度で成長している。もはやEメールですら型落ちの様相である。弊社には導入されていないので知らないのだがなんかシュレック?みたいなチャットツールは使うのが当たり前らしいし、昨今はテレワーク需要の急増によりZOOMなどのビデオ会議ツールも脚光を浴びるようになった。最近はさらにこれらソフトウェアの牙城を崩そうと、さまざまなソフトが猛追しているという世相である。そんな世相を横目に、私は今日もクリーム色の機械に紙を喰わせている。

 

 愚痴のようになってしまうとよくないのだが、とかく弊社には古い考えの人間が多い。私は普段から「FAXを使いたくない」とわめき散らしており、同僚たちには概ね同意してもらえるのだが、年配の社員には諭されることもある。曰く「やっぱり紙で残すことが大事。データは簡単に消える。」だそうだ。いやいや、データの消えやすさと紙の消えやすさなんて差はないし、だったらデータを紙に出力して残しとけばいいだろ。なんならうちのFAXは紙詰まりが起きやすくて原本丸ごと消える危険性すらあるんだが?そのへんはどうなんだ?あ?とはさすがに言えなかったものの、往々にしてこのような考えを持つ人間が多く、古い体制がなかなか変わらないのだ。

 

 また、FAXそれ自体の問題以外にも、FAXを現役で使うような事務所にもやはり問題があることが多い。私はしばしば「FAXをお送りしましたのでご確認ください」という旨の電話を受けることがある。なんなんだこれは。こんなものは、連絡が上手くいったかの連絡をしているに他ならない。この世でいちばん無意味な手間のかけ方。逆ドモホルンリンクル。アナザーダーク=小林カツ代

 

 ただ、その気持ちもわからなくはない。FAXは、確実に届いたかどうか、相手がきちんと読了したかどうかが定かにならない媒体だからだ。だからこんな無駄な手間が必要になる。こういった意味でも、実物の紙という物理性に大きく依存しているFAXは、欠陥のあるコミュニケーションツールだと言わざるを得ないだろう。

 

 

 

 しかし、私が一番問題視している部分は他にある。FAXの最もよくないところ。それはもう、圧倒的に名前である

 

 FAX。ファックス。声に出してわかる通り、かなりギリギリだ。というかギリギリアウトだと言っていい。前半は言わずもがな、英語圏で最も有名な卑語であるfuckがそのまま入ってしまっている。想像してみてほしいのだが、この言葉以外で、その内部にファックを含む語句が存在するだろうか。残念ながら、私には思い当たらなかった。倫理的にタブー視され、4wordとまで言われてぼかされる低俗な語を、はっきりと発音させる名称。こんな名前が存在していいのだろうか。

 

 そして後半。ある調査によれば、人間は「〇ックス」という言葉を聞いたとき、実に97%以上がセックスのことを想像してしまうらしい。民明書房の本に書いてあったから間違いない。ファックスはまさにこの法則に当てはまる語である。

 

 英語圏においてfuckは性行為の意味として用いられることも多い。つまり”ファックス”は、ファックとセックス、いわば性行為を2つ掛け合わせた語の構造になっているわけだ。こんな語が許されていいのだろうか。いわば2重の性行為、3Pを意味しているといっても過言ではないし、こんな言葉が何ともなしに使われているのは異様である。まるでとんでもない狂気を抱えた人間が、至って普通の人間のように生活に溶け込んでいるような、そんな末恐ろしさを感じる。そう思うと、事務所内で事務員の女性がこの語を連呼しているさまは非常に煽情的であるともいえる。考えただけで興奮してきた。どうしてくれるんだ

 

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狂気を抱えながら普通の生活をしてる人代表

 

 

 

 

 勢いに任せて書いてしまったが、私のようないち小市民が騒ぎ立てたところでこの体制は変わらない。冷静になって考えれば送信確認の電話に助けられたこともあるし、ファックとセックスが含まれているからといって3Pを意味するわけがない。アナザーダーク=小林カツ代は誰だ。このへんでやめさせてもらいます。

 

 

あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのでしょう。

 

 

 

 

 

 だって、この手紙は私が死んでから、はじめてあなたに存在を明かすものなのだから。

 

 ふふふ、驚いた?こんなものをあらかじめ用意してあったなんて、あなたは全然気づかなかったでしょうね。

 

 

 

 でも、そのために考えなければならないこともあったの。私が死んだあと、この手紙の存在をあなたにどうやって伝えるかっていうのは、少し難しい問題だったから―――

 

 

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 まずはじめに思いついた方法は、すごく単純。死の間際、私の口からこの手紙の存在をあなたに直接伝えることね。

 

 これはすごく手間のかからない方法だけれど、考える間もなく私はすぐに却下したわ。だって、風情がないっていうか、ロマンチックじゃないんですもの。

 

 それにこの方法って、手紙の隠し場所にも困るのよ。家の中に置いておいたら、偶然あなたが見つけてしまうかもしれない。でも、家の外にポンと置いておくわけにはいかないじゃない?だから、家の中でもあなたが決して見ることがない場所を確保しなくちゃならなかった。

 

 いろいろと考えてみたんだけど、そんな場所、私たちのせまい家じゃどこにもないことなんてわかるわよね。だから、この方法はあきらめて、別のやり方を探すことにしたの。

 

 

 

 次に思いついたのは、信頼できる誰かに託しておくっていう方法。これは、けっこういい方法なんじゃないかと思ったわ。

 

 だけど改めて考えてみると、私が心の底から信用できるなんていう人は一人もいないことがわかったの。いいえ、それは決して、心を通わせられる相手が誰もいないなんてわけじゃないのよ。実際にあなたが生まれてきたのは、私があなたのパパと心を通わせた結果でもあるんだし。

 

 でも、私はこの手紙が、私の死後、あなたに届くということを確実なものにしたかったの。どんなに私のことを愛して、親しく接してくれる人たちだって、内心のほんとうのところでは何を考えているかわからない。99%信用できる人っていうのは、1%信用できない人でもあるのよ。つまり私の死後、信頼する人が手紙を絶対に渡してくれるというのを「論理的に」証明することは不可能だって、あなたにもわかるわよね。

 

 だから人間の感情なんていう不確定要素をこの計画の一環にするのはあり得ないことなのよ。私は確実な方法しか求めていないんですもの。

 

 

 

 そんなこんなで、最後に思いついた(そして実際に採用することになった)方法が、私の死をトリガーにして、この手紙を読むための鍵やパスワードを得られるというやり方ね。でもこれにもいくつか手段があって、ああでもないこうでもないなんて思案をめぐらせたわ。

 

 

 

 まずはじめに思いついたのは、私の体内に物理的な鍵を埋め込んでおきつつ、別でその鍵のついたボックスを用意しておくというやりかたね。

 

 これならボックス自体はあなたの目につく場所に置いておいてもいいし、もしあなたにその中身を聞かれても「ふふ、いつかわかる日が来るわよ。」なんて、母親っぽい気の利いたひとことも言えるしね。

 

 それにうちは代々火葬だし、熱に強い素材で鍵を作っておけば、溶けちゃう心配もないだろうって思ったの。

 

 でもやっぱりダメだった。なぜって、うちは貧しいでしょう?そんな手の込んだ手術をするにはお金が足りないし、そんなことを頼める知り合いのお医者さんもいない。だからこの方法はあきらめて、物理的なものでない”鍵”をもうけることにしたの。

 

 

 

 ボックスの鍵は、必ずしも錠前のようなものでなくていい。パスワード式の鍵をかけて、私の死後にしかあなたに伝わらない言葉をその答えにすればいいんだって気づいたの。

 

 とはいえ、やっぱり難しいところがあったわ。親が死んでからあなたが初めて聞くことになる情報って、その気になって調べればわかってしまうことばっかりだったんだもの。葬儀屋さんの会社名や、生命保険会社の担当者さん、予定されてる戒名なんていうのまでね。おまけにママは機械に疎くて、漢字やカタカナをパスワードとして設定することができそうになかった。

 

 だから私は、こういう種類の人たちとは決定的に違う、そもそも私たち家族の「味方」でない職種の誰かをトリガーとして作り、しかも簡単な数字として入力する形でパスワードを残す必要があったのよ。

 

 これを読んでいるあなたなら、もう答えにたどり着いているのよね?そう、その数字は”980”……あなたに残された借金、980万円が、このパスワードの答え。

 

 

 

 取り立ての林さんとはもう会ったかしら?あの人に無理言って、たくさん貸してもらったのよ。もちろん連帯保証人をあなたにして、支払い能力はしっかりあると伝えたわ。でも、とにかく3ケタの借金を作れればよかったから、そんな大金を手にしても何をしたらいいかわからなくて……

 

 だからとりあえずパチンコを打ったの。でもべつに勝つ気なんてないから流してるだけ。知ってた?負けてもいいパチンコってつまんないの(笑)お金を減らすことが目的なんですもの、張り合いがないのよね(笑)

 

 たまに当たっちゃうことがあって、そんなときはそのへんの若い男に席を譲って、出玉もぜんぶあげてたわ。「パチンコ初めてでよくわかんないんです~代わりに打ってくださ~い」なんて言えば断る男はいないもの。そのまま勝ち分で飲みに行って、流れでヤっちゃったこともあったわ(笑)やっぱりパパと違って若い男はいいわね(笑)

 

 

 

 そんなこんなでママ、100万ちょっとの負債を作ったんだけど、本来ならこれで3ケタのパスワードとしての用途は満たせるわよね。

 

 でも、3ケタのパスワードで1や2から始まるものって、総当たりで調べていったら簡単に解けちゃうじゃない?

 

 あのボックスにかけたパスワード入力装置は、1時間以内に3回解錠に失敗すると、そこから24時間は入力を受け付けないっていう制御機能がついてるの。

 

 だから、総当たりを避けるため、なるべく大きな数字にする必要があったのよ。

 

 980万円を使い切るのはけっこう骨だったわ(笑)まして、あなたやパパに気づかれないように使う必要があったから自分のためにしか使えないしね(笑)

 

 

 

 これでこの手紙に施された周到な準備の全貌がわかってもらえたかしら?

 

 

 

 

 

 さて、それじゃ肝心の、あなたへのメッセージなんだけど……

 

 

 

 実は、特にないの。最初のあの書き出しのやつがやりたかっただけだから。

 

 まあこの計画が上手くいったかどうか、私には判断ができないけど、借金に負けずに強く生きてね。

 

 大丈夫、あなたは私の自慢の娘なんだから。パパ活とかで稼げばすぐよ。あ、でもヤるなら若い男のがいいわよ(笑)

 

 

 

 それじゃ、おやすみ。あなたの大好きなママより。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……という感じの作品で芥川賞を狙おうと思います。応援してください。

 

 

青は藍より出でて藍より青し(なんじゃこいつ)

 

 

 青色の染料は草の藍から取るが、それはもとの藍草よりもずっと青いということ。弟子が師よりもすぐれていることのたとえ。

 

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 私は怒っている。この怒りを覚えてから20余年、いまだにその熱は冷めずにいる。あれはたしか小学生の頃、図書室にあった”ことわざ辞典”的な文献でこの言葉を目にしたのだった。

 

 青は藍より出でて藍より青し

 

 なんだかオシャレな言い回しだ。少し早くから厨二病を発症していた私は、この語感を気に入ってしまった。気に入ってしまったからこそ、その後に書かれている意味を読んだときに、ますます憤慨したのかもしれない。

 

 弟子が師よりもすぐれていることのたとえ

 

 なんだこの意味は?ここではもちろん、藍が師の意、青が弟子の意であろう。待て待て、青が藍よりも青いのは当然だ、だって”青さ”の基準は”青”という色への近さによって決まるんだから。”青さ”を争うことになれば、藍色が青色に勝てるはずがない。藍にとっては完全な負け戦だ。

 

 青は戦いの尺度として、自己のアイデンティティをそのまま種目として持ち込むという無法のラフプレーを見せた。ところが青(CV:入野自由のこの態度はどうだ。「あっれ~?師匠、なんですかぁ~そのくすんだ色?そんなんじゃ全然青とは呼べませんよ、せいぜい僕の色に近づけるようにがんばってくださいねwあ、もう色素残ってないかw」などと煽り散らかしているのだ。許せん。

 

 

 

 

 

 人間で例えるなら、子どもが生みの親に対して「年齢で勝負しようよw若いほうが勝ちねw」と言うようなものだ。子どもが親より若いのは定義として決まっており、覆せない摂理である。こんな条件では勝負にならないことがおわかりだろう。それなのに子どもは、悪びれる様子もなく勝利を誇るのだ。子ども、許せん。

 

 

 

 鳥でいえば、キツツキが始祖鳥に「どっちが木うまくつつけるか勝負しましょうやw」と言うようなものだ。キツツキは木をつついてエサをとることがアイデンティティであり、たとえ鳥類の先祖といえど勝てるはずがない。それなのにキツツキは、優越感に浸りながら始祖鳥を見下ろしている。キツツキ、許せん。

 

 

 

 車でもそうだ。言うなれば、軽自動車が普通車に「どっちのナンバープレートがより黄色いか勝負しませんw?」と持ちかけるようなものだ。軽自動車はナンバープレートが黄色いことで軽だと定義づけられているのだから、普通車が勝てるはずがない。それなのに軽自動車は、勝ち誇ったようにふんぞり返っている。軽、許せん。

 

 

 

 衣服。たとえるなら、折り返すとすそがチェック柄になっているズボンが無地のズボンに「穿いてるヤツのファッションセンスで勝負しましょうよwダサいほうが勝ちっすよw」と言っているようなものだ。折り返すとすそがチェック柄になっているズボンのアイデンティティは、まさにダサいことにある。ダサいという尺度で勝負をしたら、決して負けることはないのだ。それなのに折り返すとすそがチェック柄になっているズボンは、恥ずかしげもなく「いや~先輩たちさすがっすwオッシャレ~w」などとうそぶくのだ。折り返すとすそがチェック柄になっているズボン、許せん。

 

 

 

 犬でも同じことが言えそうだ。トイプードルが雑種犬に「どっちがより風俗嬢に飼われてるかで勝負しましょw」と言うようなものである。勝てるはずがない。風俗嬢の飼う犬のうち96%がトイプードルだというデータもある(残りはミニチュアダックスフントマルチーズで2%ずつ)。一説によれば、トイプードルのトイが大人のおもちゃを連想させるためエロい女に人気だと証明した学術論文もあるらしい。そんな八百長にも等しい試合を持ちかけておきながら、「楽勝っすねwじゃ、俺は帰ってご主人のオ〇ニー見なきゃなんないんでw」などと愉悦に浸るのだ。トイプードル、うらやま……許せん。

 

 

 

 家電。例えるなら、DVDプレーヤーがBlu-rayプレーヤーに「DVD見れるかどうかで戦いませんw?」と持ちかけるようなものだ。どちらも見られるようなハイブリッドのものでなければBDプレーヤーでDVDは見られないのだから、勝負ははじめからついている。現に私の実家にあったDVDプレーヤーがある日突然BDプレーヤーに置き換えられ、DVDプレーヤーは父親の部屋に左遷されていったのだが、あのとき中に入っていた私の「チンポコマグニチュード」のディスクはどこへいってしまったのだろうか。父親、許せん。

 

 

 

 

 

 

 

 炎上が怖いのでことわっておくが、べつに子どもやキツツキを悪く言うつもりはないし、折り返すとすそがチェック柄になっているズボンを穿いたっていい。なんなら別に青色にも怒ってない。風俗嬢のオナニーは見たい。そういうことだ。